レイ・ダリオの最新の投稿：関税は表面的なものであり、私たちは「三大秩序」の崩壊を目の当たりにしている。

著者：Ray Dalio

原文：《Don't Make the Mistake of Thinking That What's Now Happening is Mostly About Tariffs》

翻訳：比推 BitpushNews

米東時間 4 月 7 日午前、ブリッジウォーター・アソシエイツ（Bridgewater Associates）創設者レイ・ダリオ（Ray Dalio）が最新の投稿で、現在の市場が関税の表面的な問題に過度に焦点を当てており、より深いシステム的変革を無視していると述べました。ダリオは、私たちが五つの力の同時再構築を目撃していると考えています：

• 通貨 / 経済秩序の崩壊；

• アメリカ国内の政治秩序の崩壊；

• 国際的な地政学秩序の再編；

• 自然災害（干ばつ、洪水、パンデミック）の破壊的影響；

• 科学技術の変革（人工知能など）の重大な影響。

以下は記事の全文：

この瞬間、人々はすでに発表された関税とそれが市場や経済に与える巨大な影響に当然のように多くの注意を向けていますが、これらの関税が導入される根本的な原因や、今後起こりうるより重大な破壊についてはほとんど誰も注目していません。誤解しないでください、私はこれらの関税が重要でないと言っているわけではありません------それらは確かに非常に重要な出来事であり、私たちもアメリカのトランプ大統領がこれらの関税を導入する重要な人物であることを知っていますが、多くの人々は彼が大統領に選ばれ、これらの関税を導入する背景を無視しています。彼らはまた、関税を導入する力を含む、すべてを推進するより重要な力を大多数無視しています。

私たちが今常に覚えておくべき、より大きくより重要な事実は：私たちは典型的な重大な通貨、政治、地政学秩序の崩壊を目撃しているということです。この崩壊は一般的に一生に一度しか経験しませんが、歴史上何度も発生してきました。持続不可能な状況が現れるたびに、この崩壊が訪れます。

より具体的には：

1、通貨 / 経済秩序は崩壊しています。なぜなら、現存する債務があまりにも多く、新たな債務の増加速度が速すぎるからです。資本市場と経済はこの持続不可能な巨額の債務に依存しています。この債務が持続不可能である理由は、深刻な不均衡が存在するからです------一方では債務者（例えばアメリカ）が債務負担を抱えながらも、過剰消費を満たすためにさらに借金を重ねています。彼らは債務に依存しています；他方では債権者（中国など）が過剰な債務資産を保有し、これらの債務国（アメリカなど）への商品輸出に依存して自国経済を維持しています。巨大な圧力がこれらの不均衡を何らかの形で是正することを要求しており、その是正は通貨秩序を大きく変えることになります。

例えば、主要な参加者が互いに信頼せず、相手が必要な物資を遮断することを恐れ（これはアメリカの懸念）、または債務義務を履行しないことを恐れる（これは中国の懸念）去グローバル化の世界では、巨額の貿易不均衡と資本不均衡が同時に存在することは明らかに不調和です。この状況は本質的に戦争状態であり、その中で自給自足を実現することが最重要です。歴史を研究したことがある人は、類似の状況ではリスクがしばしば現在私たちが直面している問題を引き起こすことを知っています。

したがって、旧来の通貨 / 経済秩序------すなわち、いくつかの国が安価な製造を提供し、アメリカがそれを輸入して巨額の債務負担を抱え、中国などの国がアメリカ国債資産を蓄積するモデル------は変わらなければなりません。この本来持続不可能な状況は、アメリカの製造業の衰退、中産階級の職の喪失、「中国製」に対する依存の深化などの問題を引き起こし、さらに厳しくなっています。去グローバル化の時代において、この貿易と資本が高度に相互接続された巨大な不均衡関係は何らかの形で縮小されなければなりません。

さらに、アメリカ政府の債務水準と債務の増加速度は明らかに持続不可能です。（この点については、私の新著『How Countries Go Broke: The Big Cycle』の分析を参照してください。）

明らかに、これらの不均衡と過剰行動を減少させるために、通貨秩序は劇的で破壊的な方法で変化することになります。そして、私たちは現在そのプロセスの初期段階にいます。この変化は資本市場に巨大な影響を与え、経済に深遠な影響を及ぼすでしょう。このトピックについては他の機会に詳しく探求します。

2、アメリカ国内の政治秩序は崩壊しています。その理由は、アメリカの人々の間に教育水準、機会、生産性、収入と富、価値観などにおいて巨大な格差が存在し------さらに現行の政治体制がこれらの問題を解決する力を持っていないからです。この状況は、左右の両派のポピュリスト間の手段を選ばない権力闘争に現れ、事務の支配権を巡って争っています。これにより民主制度が崩壊しています。なぜなら、民主制度は妥協と法の支配を必要とし、歴史は現在のような時期においてこの二つが崩壊することを示しています。

歴史はまた、強力な専制的リーダーが法の支配と民主制度が弱体化した環境で台頭することが多いことを教えています。明らかに、現在の不安定な政治状況は前述の四つの力の影響を受けるでしょう------例えば、株式市場や経済問題が政治や地政学的問題を引き起こす可能性が高いです。

3、国際的な地政学秩序は崩壊しています。なぜなら、一つの主導的な強国（アメリカ）が秩序を主導し、他の国がそれに従う時代は終わったからです。

アメリカが主導していた多国間協力型の世界秩序は、「力の優先」が支配する一国主義に取って代わられています。この新しい秩序の中で、アメリカは依然として世界で最も強力な国であり、「アメリカ第一」の一国主義的な路線に転換しています。このことは、アメリカが主導する貿易戦争、地政学的対立、技術戦争、さらには特定の状況における軍事衝突を通じて明らかにされています。

4、自然災害（干ばつ、洪水、パンデミック）がますます深刻な破壊的影響をもたらしています。

5、科学技術の変革（人工知能など）も生活のあらゆる側面に重大な影響を与え、通貨 / 債務 / 経済秩序、政治秩序、国際秩序（国家間の経済や軍事の相互作用に対する影響を通じて）、自然災害のコストへの対応などに影響を与えます。

これらの力の変化と、それらがどのように相互に影響し合うかが、私たちが本当に注目すべき核心です。

したがって、私は皆さんに「関税」という目を引く劇的な変化に気を取られず、これら五つの力とその相互関係に焦点を当てるよう呼びかけます。なぜなら、これらこそが「全体的な大周期変化」の真の推進力だからです。もしあなたがこれらの表面的な事象に惑わされるなら、あなたは：

a）これらの重大な力の現状と動態がどのようにニュースイベントを生み出すかを無視することになります；

b）ニュースイベントが根本的な力にどのように逆作用するかを深く考えないことになります；

c）大周期の典型的な進化の法則を追跡することから外れることになります------これが未来を予測するための重要な座標です。

私はまた、これらの重要な相互関係について考えることを望みます。例えば、トランプの関税に関する措置がどのように影響を与えるかを考えてみてください：

1）通貨 / 市場、経済秩序（それはその秩序に破壊的な影響を与えるでしょう）；

2）アメリカ国内の政治秩序（おそらく破壊をもたらすでしょう。なぜなら、これが支持率を弱める可能性があるからです）；

3）国際的な地政学秩序（明らかに金融、経済、政治、地政学の面で干渉を引き起こすでしょう）；

4）気候問題（ある程度、世界が気候変動に効果的に対応する能力を弱めるでしょう）；

5）技術の発展（アメリカの特定の側面にポジティブな影響をもたらすでしょう。例えば、より多くの技術製造を国内に戻すことができますが、資本市場にネガティブな干渉をもたらすでしょう。資本市場は科学技術の発展を支えるメカニズムであり、他にも多くの側面が挙げられます）。

考える際には、現在起こっているすべてのことが歴史上何度も起こったことの再現に過ぎないことを忘れないでください。私は、類似の状況にあった政策立案者が取った措置を研究することをお勧めします。これにより、あなたは可能な行動リストを構築するのに役立つでしょう------例えば、「敵国」への債務サービスの支払いを一時停止すること、資本の自由流出を防ぐために資本管理を設けること、特別税を課すことなどです。これらの政策の多くは、つい最近まで想像もできなかったものですから、私たちもこれらの政策の運用メカニズムを研究する必要があります。

通貨、政治、地政学秩序が崩壊した後、しばしば不況、内戦、世界大戦などの劇的な変化が現れ、その後新しい通貨と政治秩序が国家内部の相互作用を規制し、新しい地政学秩序が国家間の相互作用を規制します。そして、これらの新しい秩序が再び崩壊するまで、このプロセスは繰り返されます。これは私たちが最も深く理解すべき歴史の法則です。

私は『変化する世界秩序への対処の原則』（Principles for Dealing with the Changing World Order）でこれらの内容を詳しく説明しています。この本では、この「全体的な大周期」がどのように六つの明確に識別可能な段階に分かれて展開し、一つの秩序から次の秩序へと移行するかが明確に示されています。本書の内容は詳細であり、皆さんが現在の状況を歴史上の典型的な進化と比較し、私たちがどの段階にいるのか、次に何が起こる可能性があるのかを識別するのに役立ちます。

私はその本や他の書籍を書く際に、今もなお望んでいることがあります：

1）政策立案者がこれらの力を理解し、相互作用し、より良い政策を推進してより良い結果を生む手助けをすること；

2）個人を助けること------彼らは単独で政策に影響を与えることはできませんが、共に力を生み出すことができる------これらの力により良く対処し、自分自身と関心のある人々のためにより良い結果を求めること；

3）異なる視点を持つ賢い人々と私がオープンで深い交流を行い、共に真実を発見し、対処法を見つけるために努力すること。