イーサリアムに注目：世界的な金融決済層になる可能性を秘めている
イーサリアムが単一のチェーンではなく決済レイヤーとして設計されていることは、なぜその時価総額がこれほど高いのかを説明しています。著者：Tim Robinson
翻訳：深潮 TechFlow
イーサリアムは、世界の金融の決済層であり、この役割を果たすことができる唯一のブロックチェーンです。
この主張に驚いているなら、この記事はあなたのために用意されています。他のブロックチェーンは依然として多くの有用なアプリケーションをホストし、特定の分野で機能しますが、世界の金融システムはイーサリアム上で運営されることになります。
決済層とは何ですか？
決済層は、消費者がアプリケーションを使用したり友人と取引したりするためのチェーンではなく、他のチェーンがその上に構築する基盤となるチェーンです。以下の5つの側面に焦点を当てています：
- データを保存し、データの正確性を検証することで他のチェーンを保護する
- チェーンエコシステム全体で使用されるトークンや資産を展開する
- 複数のチェーン間で共有されるべき状態を管理する
- すべての接続されたチェーンのネイティブブリッジを保護し、ブリッジリスクを排除する
- すべての接続されたチェーン間で相互運用性を提供し、対立リスクなしで無限の流動性を安全に移転する
これらはイーサリアムの上に構築されたチェーンであり、データを一つのブロブにまとめてイーサリアムに保存するため、ロールアップまたはレイヤー2と呼ばれています。
イーサリアムが決済層として設計されている理由は、表面的には他の新しいチェーンよりも遅く高価に見えるにもかかわらず、その時価総額が非常に高い理由を説明しています。
なぜ世界の金融システムは単一のチェーン上で運営できないのか？
多くのブロックチェーンは、毎秒1万、5万、さらには10万以上の取引を処理できると主張していますが、もし彼らがそのレベルに達することができれば、それは素晴らしいことです。
問題は、世界の金融システムの規模が少なくとも3から4桁大きいことです------毎秒1000万から1億件の取引、さらにはそれ以上、特にAIエージェントが稼働した後です。
「しかし、クレジットカードは毎秒5万件の取引で世界中のすべての支払いを処理できる」とある返信者が言いました。
この数字は正しいですが、あなたは未来の金融システムの巨大な規模に気づいていません。
80年代のインターネットが登場する前に、どれだけ多くのテレビ番組、書籍、一般情報があったか考えてみてください。当時、これらのコンテンツの制作と配信は限られた数の出版社に制限されており、ほとんどの人々は数少ない配信チャネルから情報を得ることを余儀なくされていました。
そしてインターネットが登場し、誰もがどこでもブログやビデオチャンネルを作成したり、単に自分の意見を世界と共有したりできるようになり、影響力を持つ存在になりました。
コンテンツの量は10倍や100倍ではなく、100万倍に増加しました。
金融が本当に解放され、誰もが今日のような一部の債券、株式、不動産だけでなく、あらゆる資産に投資したり取引したりできるようになったとき、金融システムは類似の爆発的成長を経験するでしょう。
株式や債券は、YouTube世代の目には伝統的なテレビのように退屈に見えるでしょう。
人々は何をするでしょうか？
- 彼らは自分の好きなゲーム、バンド、曲、アーティスト、ブロガー、インフルエンサー、著者、本、ビデオに投資します。どこでもあらゆるプロジェクトに資金を提供し、そこからいくつかの利益やリターンを得ることができます。
- ゲームアイテムを収集し、取引します------数百万のプレイヤーが何千ものゲームで取引を行います。
- 現在のウォール街の金融取引を行いますが、規模はグローバルに拡大し、参加したいすべての人が参加できるようになります。
- 何にでも賭けます。
これらの取引を行うのは人間だけでなく、数百万のロボットやAIエージェントがあらゆる場所で数十億の資産を取引し、数百万の市場で優位性を得ようとします。
あなたはまだ、これらすべてが世界中で複製できる数台のPCで実行できると思いますか？
もしかしたら、すべてが実現しないかもしれません。政府がこの楽しみを抑圧し、私たちは永遠に退屈な株式や債券の取引に閉じ込められるかもしれませんが、私はそれに疑問を持っています。若い世代が未来の基調を決定しており、彼らは伝統的な金融資産よりもミームコインやゲームアイテムの取引に興味を持っているのです。彼らはYouTubeに対してテレビよりも興味を持っているのと同じように。
なぜ世界の金融には決済層が必要なのか？
厳密には必ずしも必要ではありません。結局のところ、私たちはすでに多くの独立したデータベース上で運営されている金融システムを持っています。しかし、あなたのシステムが標準化された層を介して他のすべてのシステムに接続されるとき、速度、安全性、相互運用性の向上は明らかです。これを無視することは、インターネットが世界を支配し始めた後でも、依然としてプライベートインターネット上であなたの会社を運営しようとするようなものです。
イーサリアムのもう一つの重要な特性はその中立性です------敵対する国や企業でさえも、このプラットフォームを使用して取引を決済できます。以前は、二つの国が戦争をしているとき、彼らはお互いの通貨や金融システムを信頼できなかったため、金を使用して債務を決済していました。今では、彼らはイーサリアム上の任意の中立的な暗号通貨で取引できます。
なぜすべての金融機関は自分のロールアップを持ちたいのか？
イーサリアムが2015年に初めて登場したとき、多くの金融会社はこの技術を試み始めました。ネットワークの一部になるためではなく、協力する企業間で自分のプライベートブロックチェーンを運営するためです。JPモルガンはOnyxチェーンを開始し、Microsoftはイーサリアムブロックチェーンをサービスとして提供し、AmazonはAWSホスティングブロックチェーンを作成しました。企業はプライベートブロックチェーンを持つことで制御を維持したいと考えています------これにより、コンプライアンス、KYC（顧客確認）、AML（マネーロンダリング防止）を実施し、ハッキングが発生した場合にチェーンを一時停止できます。
これらのプライベートブロックチェーンは成功しませんでした。なぜなら、ブロックチェーンの有用な二つの理由、すなわち相互運用性と許可のない革新を無視していたからです。人々が協力し、互いの製品を補完し拡張する際に、誰もが貢献できるとき、驚くべきことが起こります。そして、この二つの要素を取り除くと、得られるのは単に遅いデータベースです。
イーサリアムはLayer 2を中心としたエコシステムであるため、あなたは独自の機能を持つ独立したサブエコシステムを自由に構築でき、同時により大きなイーサリアムエコシステムの一部でもあります。------ ヴィタリック・ブテリン
ロールアップを通じて、企業は二者択一の利点を享受できます------制限や管理のあるチェーンを作成しながら、イーサリアムエコシステムとの相互運用性を維持できます。彼らはKYC（顧客確認）、AML（マネーロンダリング防止）ルールを実施し、取引を人工的に審査し、不正行為者を排除することができます。これらはすべて、集中型プラットフォームで行っているのと同じように行えます。
今やユーザーは数分で彼らのプラットフォームにシームレスに移行でき、これが開発者を引き寄せ、顧客のために有用なアプリケーションを展開することを促進しています。彼らのロールアップが他のロールアップと同じ言語を使用している場合、これらのアプリケーションは1日で立ち上げることができます。開発者は手数料を通じて収入を得る一方で、企業は多くの追加サービスを無料で受け取ります。
Coinbaseはこの戦略を先駆けており、彼らのBaseチェーンはわずか1年前に立ち上げられ、現在では250以上のアプリケーションが存在しますが、Coinbaseはそれらを構築するために一銭も費やしていません！Coinbaseは開発者にインセンティブを提供し、スマートウォレットを通じて数百万のユーザーと数十億ドルの資金にアクセスできるようにし、これがウィンウィンの状況を生み出しました。
このロールアップを通じて製品を拡張する戦略は、現在暗号エコシステム内で徐々に人気を集めており、Kraken、OKX、Crypto.comはそれぞれ自分たちのLayer 2を立ち上げています。
世界最大の資産管理会社であるBlackrockは、潮流が変わりつつあることに気づき、他の機関が注目する前に方向を調整しました。彼らは最近、イーサリアム上に1億ドルのファンドを立ち上げ、ラリー・フィンクは、すべてをトークン化してより良い相互運用性を実現し、他の金融システムよりも少ないコストで運営することに楽観的です。彼ら自身のロールアップを立ち上げ、他の人々よりも早くエコシステムを構築するのは時間の問題です。
金融会社がCoinbaseが何をしているのか、Blackrockが何を試みているのかを認識し、ユーザー、流動性、そして膨大な無料の開発者基盤を得ることができるとき、彼ら自身のロールアップを立ち上げることは明白な選択となるでしょう。
なぜイーサリアムだけがこれをサポートできるのか？
イーサリアムは、数千のチェーンをサポートすることに高度に焦点を当て、最大限の分散化、高い稼働時間、安全性を維持する唯一のブロックチェーンです。このエコシステムを現在使用しているユーザー体験はあまり良くありませんが、これはイーサリアムが今後10年間で数百万TPSに拡張するために行った短期的な犠牲です。ユーザー体験を修正することは、基盤となるインフラを再構築するよりもはるかに簡単であり、すでに多くのプロジェクトがクロスチェーンの問題を解決しています。
数千の他のチェーンをサポートする層としてのこのシステムは、他のネットワークが簡単に複製できるものではなく、エコシステム全体の包括的な改革が必要です。あなたは橋、相互運用層、共有ソーター、クロスチェーンMEVソリューション、複数のチェーンを処理できるウォレット、クロスチェーン資産を識別できるアプリケーションを作成する必要があります。イーサリアムは現在、金融の基盤層になるためにこれらすべての成長の痛みを経験しています。
さらに、イーサリアムはこの世界のために高度に最適化されています：
- 最小限のハードウェアで動作するように設計されており、通常のインターネット接続のみを必要とします。これにより、ノードは世界中に広がり、ほぼ破壊不可能になります。
- ステーク層で高度に分散化されており、単一の実体が数パーセント以上のステーキングトークンを保有していません。チェーンへの攻撃には、世界中の多くの企業の調整が必要であり、これはほぼ不可能です。誰かが乗っ取ろうとしても、コミュニティによって排除される可能性があります。
- ソフトウェア層でも高度に分散化されています。イーサリアムには5つの実行クライアント（Geth、Nethermind、Besu、Reth、Erigon）があり、さらに4つが開発中（Megaeth、Monad、GPU-EVM、Ethereum Rust）で、6つのコンセンサスクライアント（Teku、Lighthouse、Prysm、Nimbus、Lodestar、Granadine）があります。これらのクライアントは、異なるチームによって異なるプログラミング言語で世界中で作成されています。これにより、ネットワーク内で欠陥が発生する可能性が極めて低くなり、たとえ1つのクライアントに重大な脆弱性があったとしても、ネットワークがダウンすることはありません。
- すべての主要なアップグレードは、この決済層の設計をサポートするために行われています。イーサリアムはLayer 2に可能な限り多くのデータを提供し、ZK証明やロールアップを機能させ、クロス互換性を実現するために必要な技術の迅速な検証に焦点を当てています。
- イーサリアムコミュニティは、他のどのチェーンよりも分散化を最大化することに関心を持っています。コミュニティには、自宅でステーキングを行い、自分の検証ノードを運営し、大企業にステーキングクライアントの多様化を促し、大規模なステーキングプロバイダーから小規模なプロバイダーに移行するようユーザーを奨励する多くの人々がいます。
はい、他のエコシステムがこのロールアップの世界に移行しようとするかもしれませんが、彼らはすべてイノベーターのジレンマに直面しています------現在の製品を破壊する技術を研究することを望む企業や団体はありません。さらに、単一のチェーンを構築しようとしているすべての人々は、すでにイーサリアムから他のプロジェクトに移行しており、この多チェーンの高度にスケーラブルな世界に関心を持つほとんどの人々は、イーサリアムの開発や研究に従事しています。このビジョンの変革を実現し、競争のために必要なエコシステムを構築するためのリソースと才能を持つ他のチームは存在しません。
ビットコインはどうですか？
ビットコインは、この決済層の競争者として最も可能性が高いです。なぜなら、イーサリアムと同様に、分散化と安全性に焦点を当て、他のすべてのものをほぼ犠牲にしているからです。不幸なことに、ビットコインの最大の利点は最大の欠点でもあります------それはハードフォークを行わないことです。ビットコインがハードフォークを行わないということは、ロールアップを実現するために必要な多くの破壊的な変更を追加できないことを意味します。これらの変更がなければ、ロールアップを追加し、それを信頼できる、安全で、安価で、迅速にするためのインフラを構築することは極めて複雑な作業です。
仮にLayer 2に関するすべてのビジョンが実現したとしても、それはイーサリアムよりも遅く、高価で、複雑であり、エコシステムの発展において何年も遅れをとることになります。これは競争が難しいことを意味します。
基盤層を速くすることに何の問題があるのか？
技術におけるすべてにはトレードオフがあります。基盤層がより多くの作業を担うと、ノードを運営するための要件が増加し、それを運営できる人や場所が減少し、分散化の程度が低下します。また、失敗のリスクが高まり、ダウンタイムを引き起こします。ダウンタイムは基盤層にとって最悪の事態であり、その上に構築されたすべてのロールアップも中断されます。
ZK証明（ZK Proofs）の魔法を利用すれば、基盤層のノードは数ミリ秒で数百万、さらには数十億の取引を数千のLayer 2にわたって検証できます。これらの取引を処理し、ZK証明を作成するノードは非常に強力である必要がありますが、それらを検証するノードは非常に小さくすることができます。これは、基盤層の唯一の真の任務がデータを保存し、ZK証明を検証し、オンラインを維持することであることを意味します。ハードウェア要件が低ければ低いほど、より良くこの作業を遂行できます。
なぜ私たちはイーサリアムへの決済を持つチェーンエコシステムが必要なのか？
現在、いくつかのチェーンエコシステムが互いに相互運用可能です------Cosmosはその中で最大のものです。これらのエコシステムは、単一のチェーンがすべてのタスクを完了できると考えるよりも理にかなっていますが、彼らの共通の欠点は、彼らの間で最大限に安全な決済と相互運用層が欠けていることです。
この基盤層がなければ、各チェーンの安全属性を個別に確認し、信頼しなければならず、これは非常に推論が難しいです。また、トークンがエコシステム全体で流動するにつれて、あなたは起源チェーンだけでなく、最終目的地に到達する過程で通過するすべてのチェーンを信頼しなければなりません。
この共通の共有基盤層を持つことで、クロスチェーントークンを展開したり、共有状態を保存したりする場所を作成でき、これによりそれらがこの層によって保護され、すべてのロールアップ間でシームレスに伝達されることが保証されます。
これは避けられないことですか？
長期的には、このトレンドはLinuxがサーバー分野を支配するのと同じように避けられないように見えますが、金融インセンティブによってこのプロセスが加速されています。誰もが使用しているが、誰もが制御したり制限したりできない、家賃を取らない共通の標準プラットフォームを持つことは、企業やさまざまなユーザーにとって非常に強力で魅力的です。
現在の金融システムは、壊れた、分散した、修復が難しいものであり、実際に中立的な参加者が調整することはほとんどありません。そして、これらの中立的な参加者が独占的地位を得ると、しばしば家賃を求めたり、自分たちの倫理基準を実行しようとします。人間がネットワークを制御する能力を排除することで、私たちはすべての人に最もサービスを提供する金融システムを得ることができます。これが私たちが待ち望んでいた金融のインターネットであり、最終的には誰もがこれを認識するのは時間の問題です。
